及川敬貴 研究室(横浜国立大学)
Hiroki Oikawa's Laboratory

What's New?
2023.12.1 だれかの「物語」から自由になる?


2023.11.27 「ボクはにおワン!」(Blog)
2023.11.5 シンポジウムで講演します!(11月19日14時00分より)
2023.10.25 研究室OBが株式会社社長に就任 
2023.10.10 「わんわんトリコロール!」(Blog)
2023.10.7 格付けチェック―秋の3年生歓迎スペシャル
2023.10.2 YNU研究最前線
2023.9.27 ロースクール(上智大学法科大学院)がスタート
2023.9.21 「違いの分かる男」(Blog)



What's New?

  • 23.12.1 <研究室の風景> 昨日のゼミでは、金子淳(2019)「博物館を取り巻く「物語性」をめぐって」を読みました。だれか(権力者であることが少なくない)が声高に語る「物語」に囚われずに生きるにはどうすればよいのか? 自分の「物語」を語れるのは、その物語の受け手か、作り手か? ゼミでの議論は(アルコールを一滴も摂取していなかったにもかかわらず)今年一番(?)の盛り上がりを見せました。
  • 23.11.27 「ボクはにおワン!」(Blog) ルークは他の犬たちと全く違うところ。それは・・・・続きはこちら
  • 23.11.5  シンポジウムで講演します!(11月19日(日)14時00分から神奈川県弁護士会館にて) コロナが猛威を振るっていたため、国内のシンポジウムでお話するのは数年ぶり。タイトルは『ネイチャーポジティブのための社会デザイン』(写真)。今回は、裁判ネタは封印し、この数年で展開され始めた新たな政策動向をとり上げます。AIやビッグデータの時代に、生物多様性関連政策も大幅に変わっていきそうな予感が・・・・。詳しいことはこちら
  • 23.10.25 研究室OBが株式会社社長に就任 当研究室で修士号と博士号を取得した、舛田陽介さん(写真)が (株) Think Nature の取締役社長に就任しました! Think Nature は、今、大変な注目を集めている日本のベンチャー企業。彼の年収は、わたしをはるかに凌いで・・・・!?
  • 23.10.10 「わんわんトリコロール!」(Blog) 犬たちの毛色のベスト3は何だと思いますか? おそらく、この写真の3色。もしも犬たちが国を作って、トリコロール(三色旗)を掲げるとしたら・・・・続きはこちら
  • 23.10.7  格付けチェック:秋の3年生歓迎スペシャル! 今年も研究室に新たなメンバーを迎えることができました。梅田絹子さん、関蒼大くん、福與正二郎くんの3名です(いずれも学部3年生)。それぞれ、ゼミを盛り上げてくれることでしょう。で、早速、及川研恒例の格付けチェックを開催。今回は、『マスカット食べ比べ!』 一方はひと房4000円、もう一方は1000円。さすがに簡単に分かるだろうと思いきや・・・・。
  • 23.10.2  <YNU研究最前線> 安東日向子さん(学部4年)の卒論構想の紹介です。テーマは、「ふるさと納税の体験型返礼品による関係人口の創出の条件と課題」。その概要は、「ふるさと納税の返礼品には、物質型返礼品と体験型返礼品(例:収穫体験、工芸ワークショップ)があり、後者には「関係人口」を創出する効果があるという。関係人口とは、特定の地域に継続的な関心・関わりを持つ外部の人々(つまり、よそ者でありながら、当該地域に関わり続ける人々)を指し、その創出は過疎化対策の一つとして期待されている。では、どのような体験型返礼品にいかなる関係人口創出効果があるのだろうか。本研究では、体験型返礼品を網羅的に調査し、いかなる体験型返礼品にどのような関係人口創出効果があるのかを探りたい」です。
  • 23.9.27  <ロースクール(上智大学法科大学院)スタート!> ロースクールでの16年目の講義が始まりました。昨日が初回。準備も含めて疲れます。司法試験を見据えて、なので、やはり緊張感が違う。。。。
  • 23.9.21 『小犬と暮らしてわかった30のこと Vol.11 「違いの分かる男」』(Blog) 写真には2本の歯ブラシが写っています。一方がルークの、もう一方がわたしの歯ブラシです。右側のものは、真ん中が黒ずんでいて、何だかな~という感じですね。ペット用の歯ブラシだから・・・・続きはこちら
  • 23.9.12 「Oh! 北海道(3)―クリスの農園から虹を望む」 クリスという大学院時代の親友がいて、もう30年近い付き合いになります。長らくカナダで暮らしていたのだけど、一昨年、北海道へ戻ってきました。「農家」になるために! 写真は彼の農園から遠くに見えた虹。盆地のせいなのか、夕方にはよく虹がかかるそうです。奥さんの話だと、北海道へ戻ってから、クリスは生き生きとしているとのこと。いやぁ、良かった!
  • 23.9.7  <環境法政策(学)のフロントライン> 親友の James Beattie(ビクトリア大学教授、NZ)が編集長を務め、わたしも編集委員をしている国際雑誌『環境史学研究』の最新号が公刊。International Review of Environmental History Vol.9 Issue 1 (Australian National University Press, 2023)  今回の特集は、"インド洋諸国における気候変動とその脆弱性" です。上記のサイトから無料でPDFがダウンロード可能。本誌へ論文投稿を考えている方は、お気軽にメールください。
  • 23.9.4 「Oh! 北海道(2)―ススキノ呑みすぎ"御免"」 北海道の旭川市は大雪山から流れてくる清廉な地下水に恵まれています。そんな生態系サービスを利用して酒造りをしているのが、男山酒造。その直営店がススキノにあり、昔は、知る人ぞ知るという存在でした。名前は「金富士」。その当時は、お客さんのほぼ100%がオジサンたちだったので、わたしたちのような学生は珍しかったのでしょう。いつでも歓迎してくれて、料金もメチャクチャに安く、一晩でお銚子を100本空けたこともあります(お店の人たちも驚いていました)。写真は、定番の玉子焼きと看板的存在の”御免酒”。呑みすぎ御免の時代が懐かしい! そういえば、このお店が入っている共同トイレで、そごうデパートの人事部長にリクルートされたことも。何だかすごいリクルートだったなぁ・・・・。
  • 23.8.29 「Oh! 北海道(1)―夏休みが欲しいなら」 『民事判例』という専門雑誌があり、そこには、さまざまな個別法分野(例:民法やら労働法やら)の判例概観や判例評釈が載っています。それぞれの個別法分野で研究会が組まれており、その一つにわたしも入って(入れられて?)いて、半年に1度ほど、判例概観や判例評釈が当たるのですが、これがキツイ! 1か月ほど修行僧のような日々が続き、かつ、原稿提出前の研究会報告のストレスの大きさといったらたまったものではありません。今回もこれが当たり、7月初旬から8月20日までほぼ休みなしで作業していました。これを耐えられたのも、「この仕事が終わったら、久しぶりに北海道だ!」と思えたからです。目先に何かニンジンのようなものがあるというのは大切ですね、ハイ。
  • 23.8.11  「韓国の友人たち(3)」 このTシャツは、今から30年ほど前に、当時のフルブライト奨学生の同期メンバーで作ったもの。ヒョンギュンとわたしの名前も記されています(上下に並んでいる! 今、気がついた)。数日前に、ヒョンギュンからLINEが来て、「まだ、持っているか?」というので、この写真を送ったところ、とても驚くと同時に、喜んでくれました。うちの研究室からも、だれかフルブライトに選ばれてくれないかな~・・・・。
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実際のスライダーの動きは、プレビュー/公開ページでご確認ください

「何が問題か」が問題だ

環境政策論における研究テーマとは何か? 答えは、何でも! ”環境”という言葉の先に広がる景観は、そう言っても良いほどに広い。だから、この研究室では、政策に関するものなら「何でも研究できる」としておこう。ただし、テーマは、既存の考え方やものの見方に挑むものであること。キレイな結果を出すことだけが研究の目的ではない(し、そんなことが目的だったらダサすぎる)。不格好でも、鋭い問題意識に基づいた、何やら迫力のある研究。この研究室ではそんな研究を手掛けてほしい。

及川 敬貴

(おいかわ ひろき)
横浜国立大学都市科学部教授(環境リスク共生学科)および大学院環境情報研究院教授(自然環境専攻)。横浜国立大学評議員 兼 都市科学部副学部長。環境法政策学会理事。環境法・行政法が専門。2023年2月25日に『人新世のエコロジー』(日本評論社)を公刊。同年1月27日には、日本経済新聞の『経済教室』へ「「自然の恵み」は計算できる」を寄稿。その他の業績や経歴・学歴などについてはこちら

研究室のメンバー+1匹

大事にしていること

「メリハリをつける」。ゼミは週に1日だけ。ならば気合を入れて臨もう。自分が報告担当であろうと / なかろうとしっかりと文献を読み込み、“考えた”上でゼミに臨む。オンとオフの切り替えが大事。
「ちょっとだけ新しい・ちょっとだけ面白い」を持ち寄る。ゼミの前後で自分が“変異”する。それを感じ・認め・驚けるように。

ゼミのこと

ゼミ(seminar)>> 週1回(木曜午後)、2~3時間程度。次の2つがメイン。

 文献批評 >> 課題文献について、担当者がレジュメを用意し、それを基に皆で検討を進めていきます。レジュメには、対象となった論文の主張や批評担当者の解釈・見解、それに関連文献情報などが書き込まれます。これまでの課題文献(の一部)については こちら

 研究報告 >> 文字通り、自分が手掛けている研究内容の報告です。なお、2022/23年度の研究室メンバーの研究テーマはこのサイトのもう少し先で紹介されています。

ゼミを通じてできること
 成功すること。それは約束できません。しかし成長することはできます。そのための"場"がゼミです。具体的には、上の「文献批評」や「研究発表」を通じて、<批判的に考える力>をつけていきます。いわゆる Critical Thinking です。この力を身につけられれば、どのような時代・社会状況でもサバイブしていけるはず。

就職先や進学先のこと

4年生の進路は「一般就職」と「大学院進学」が半々くらい。研究室のOB&OGには公務員が多いです(法や政策の勉強は公務員試験に通じるところがあるからなのかも)。大学教授も2名。民間企業では、エネルギー系や大手コンサルなどが多いような。最近の主な就職先は次のとおり。
 
<公官庁>
 環境省、東京23区、横浜市(3名)、茅ケ崎市(神奈川県)、高崎市(群馬県)、別府市(大分県)など
 
<民間企業>
 ENEOS(2名)、東京ガス、出光昭和シェル、IBM、日立製作所、NTTデータ通信、伊藤忠テクノソリューションズ、読売広告社、NEXCO東日本、楽天(2名)、ニチレイ、三菱UFJリサーチ&コンサルティング、PwC(PricewaterhouseCoopers は外資のコンサルティング会社。世界三大監査法人の一つ)など
 
<大学>
 福岡女子大学(教授)、静岡文化芸術大学(准教授)

及川が書いたもの。2022-2023

自然が絶滅しかかっている? いや、むしろ"妙に元気”になって、人間に挑みかかってくるケースも多いのではないか。だとしたら、わたしたちは、自然を守るだけではいけない。必要なのは、機に応じた「手入れ」だろう。本書では、そのために必要な考え方としての「生態系サービス」を、そして、参照軸となる世界各地での手入れの事例を紹介していく。(日本評論社、¥2620)
稀少な動植物を守ろうという条例(=その地域で作られる法律のようなルール)を制定する自治体が増えてきた。しかし、いくつかの自治体ではそのようなルールを作るつもりはないという。なぜなのか? 問題がないということなのだろうか? 本論文ではその謎を探った。(『応用生態工学』25巻2号97-102頁)
どう見てもベターな政策提案。しかし、それが採用されないことは多い。なぜか。積み重なった"しがらみ”が、古い政策たちの防波堤となるからである。そうした"しがらみ”(=経路依存(性))が”断ち切られる”ことはないのか? ある。稀にだがある。そんなケースが、1970年におけるアメリカ環境保護庁(EPA)の創設であった。経路依存性が原因でずっとできなかった(環境をめぐるさまざまな)権限の統合。それを成すカギとなったのは?(『行政法理論の基層と先端』所収、信山社)
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EAEH2023(2023年度アジア環境史学会)にて、及川と Lee Jongmin 教授(韓国科学技術大学)が共同で企画・立案し、二人で座長も務めるパネルセッション。日韓の若手研究者5名が登壇予定。6/28~7/2に大田(韓国)で開催。

ある採石事業(法的な認可取得済み)によって地下水脈が傷つく可能性があるが、確たる証拠は示せない。そのようなケースで、地下水脈由来の生態系サービス(生活用水など)を守るために、当該事業を禁ずるような条例は制定できるのか。最高裁の判断(最三判令和4年1月25日)はいかに?(『民事判例(日本評論社)』25号118-121頁)

アメリカ環境法学の定番テキストの邦訳。及川は第11章「エネルギー」(第1節 今日におけるエネルギー事情と課題、第2節 省エネルギー、第3節 再生エネルギー、第4節 新規発電施設と送電線の立地、第5節 環境問題)を担当。(尚学社 ¥5555)
日本の行政法学の定番テキスト。最新の第4版がついに公刊。及川は、第6講「行政組織と公務員」、第29講『地方自治の仕組み(1) ―地方公共団体の組織と活動―』、第30講『地方自治の仕組み(2) ―行政主体間の法関係―』を担当。(三省堂 ¥3740)
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わたしたちの問題意識

里山保全活動は「閉塞感」に覆われているのか?(中村愛・R5大学院修了(学術修士))
行政とNPOが協働して社会事業を運営していく。日本でもそんな光景が普通に見られるようになった。ブラボー! なようにも見えるが、自然を相手にするNPOの間では、どういうわけか「閉塞感」が広がっているという。本当にそうなのだろうか? だとしたらなぜ? 本研究では、自然への手入れを持続的に行うための駆動力としての「楽しみ」に着目した。なぜなら、「楽しみ」の減退が「閉塞感」が蔓延する一因といわれているからである。「楽しみ」は減っていたのか、増えていたのか、それとも? ある里山NPOへの調査を行う中で見えてきたこととは?
文化的サービスのナッジとしての可能性―ポイ捨ての抑制要因に着目して(近藤聖夏・学部4年)
これまで、観光地において景観の美化が観光客を環境に配慮した行動意思へ導くとする研究は国外で多く行われてきた。一方で、地域住民の環境に配慮した行動意思には文化的サービスの享受レベルが関係するという研究も存在する。本研究では、これらの先行研究に加え、ポイ捨て行動の抑制要因に関する研究から明らかになった、観光客のポイ捨て行動の抑制フロー(景観の美化→情緒的ブレーキ→ポイ捨てをしない)を用いる。この既存のフローに文化的サービスの享受レベルを取り入れ、アンケート調査を通して定量的に分析することで「景観の美化→情緒的ブレーキ」の間のロジックを強化し、先行研究のフォローアップをしたいと考える。加えて、文化的サービスが観光客の行動を望ましい方向(ポイ捨てをしないという環境に配慮した行動)に変更させる選択アーキテクチャー、つまり「ナッジ」であるという可能性を模索することで景観美化政策へ新たな美化基準を提案したい。

地域の象徴である生物の社会的立ち位置―自治体指定のシンボルの鳥の実態(関根佐和子・修士2年)

地域の生物をシンボルとして利用することで、人々の関心が集まり、その生物を中心とする保全活動が活性化するという。

例えば、コウノトリなどの全国的に有名な生物については、地域の生物多様性保全や持続可能な地域づくりに貢献していることが先行研究で明らかにされている。

しかし、そのような有名な生物を”持たない”地域ではどうすればよいのか。実は、全国各地の自治体は「○○県(市)の花・木・鳥」など、特定の生物をシンボルとして公的に指定済み(以下、シンボル種)であるが、シンボル種はこれまで十分に研究されてこなかった。

本研究ではシンボル種の中でも鳥に着目して、全国における選定状況や選定経緯を調査し、その実態を分析する。生物が地域の象徴として選ばれるまでのプロセスや、選ばれた後どのように利用されてきたのかを明らかにすることで、シンボル化した生物が人と自然の関係構築に果たしてきた、あるいは今後果たせる役割を考察したい。

レッドデータブックで自然を守る?(伊藤航輝・R5大学院修了(学術修士))

レッドデータブック(RDB)は絶滅のおそれのある生き物たちのリストである。単なるリストなので、それには開発事業を規制するような力は伴わない。というのが教科書的な説明であった。しかし、全国の都道府県を対象にしたアンケートおよびヒアリング調査を行ってみたところ、RDBは開発事業を抑制するための“指導”にも用いられている実態が浮かび上がってきた。RDBは単なるリストというわけではなく、事実上の規制ツールでもあるのだろうか? 似たような“事実上の規制ツール”は他にもいろいろありそうである。

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水族館が地域社会にもたらす公益性―文化的サービスに着目して(岡田優里・学部4年)

海に囲まれた日本。我々は古くから、海の恵みを享受してきた。皆のものである海には”公共性”があるといえる。そして、そうした海は、海産物の供給など、我々に様々な“益”をもたらしているから”公益”的機能を発揮しているともいえよう。では、我々はその機能をどれくらい理解しているだろうか? 本研究では、その理解の助けとなっている存在としての水族館に着目する。水族館は、生態系サービスのうちの”文化的サービス”なるものの供給を通じて、海の公益的機能を分かりやすく翻訳してくれているように見える。そして、その役割は水族館が私設であってもそうなのではないか。本研究では、このような観点から、水族館を、自然の恵みという具体化できない要素とその受け手である地域住民・地域社会を結ぶ存在、いわば結節点として描き出してみたい。水族館という媒体を通し地域住民・地域社会はどのような文化的サービスを受けているのか? そこでは、“公”ではない”プライベートな水族館”が”公益性”をもたらすという可能性を探ることができるはずだ。

幼少期の自然体験だけが環境意識を高めるのか?―新たなパス(経路)の可能性を探る(加藤大智・学部4年)
これまでの環境意識と環境保護行動についての研究は、アンケート調査を用いて行われてきた。そこで指摘されてきたのは、幼少期の自然体験(の多さ)が環境意識を高める要因となっているらしいということである。しかし、アンケートで、自然体験が「多かった」と答えている人の自然体験量は、そうでないと答えた人のそれと比べて「本当に多かった」のか? 人間の記憶というものは、望ましい自己像維持のために、肯定的な自伝的記憶が詳細になりがちであるという。言い換えれば記憶は望ましい自己像から帰納的に形作られるのである。こうした記憶の特性を踏まえると、大人になってから、自然体験などを通じて環境意識が高まったことで幼少期の記憶が再解釈され、幼少期の自然体験が多かったと回答している可能性もあるのではないか? 本研究では、この可能性を探ってみたい。自然体験についての再解釈を示すことで、環境意識を高める方法は幼少期の自然体験のみではなく、大人になってからの体験・自己像の形成というパス(経路)もあることを指摘できればと思う。

排出量取引制度のカタチ:市民参加による地産地消型の制度設計は可能か?(横田悠貴・学部4年)

カーボンニュートラルの実現に向けて排出量取引制度という手法が注目を集めている。これは企業ごとに温室効果ガスの排出枠を割り当て、枠を超過した企業と枠に余裕のある企業との間で取引をする制度のことである。これを制度化することによって、全体の総排出量を削減するだけでなく、取引で得られる資金のために排出量を削減しようとするインセンティブにもなる。
 ところで、こうした取引を企業間だけでなく市民にまで波及させたPCT(Personal Carbon Trading)という制度も議論されている。つまり、市民が削減した排出量を枠として企業が買い取り、ポイントやサービス券を支給するというものであり、市内での消費に限定することで地域の活性化も見込まれる。国家レベルでの導入が進まない日本において、一度個人レベルまで分解・ダウンサイジング化することによって、制度の新しい枠組みを提供することができるのではないか。本研究ではこのPCTを考察対象とする。

ふるさと納税(体験型返礼品)による関係人口の創出の条件と課題(安東日向子・学部4年)

ふるさと納税の返礼品には、物質型と体験型という二つのカテゴリがある。体験型返礼品は、収穫の体験や工芸ワークショップなど、具体的な体験を提供するものだ。このような体験型の返礼品は、「関係人口」を増やす可能性があると言われている。関係人口とは、特定の地域に持続的な関心やつながりを持つ外部の人々を指し、彼ら彼女らは、地域の特色や魅力に引かれ、継続して訪れることで地域とのつながりを深めていく。過疎化が進む現代において、このような関係人口は地域の活気を取り戻す上で重要であると考えられるようになってきた。そこで、いかなる体験型返礼品にどのような関係人口創出効果があるのかを明らかにするべく、本研究ではさまざま体験型返礼品を詳しく調査していく。
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