及川敬貴 研究室(横浜国立大学)
Hiroki Oikawa's Laboratory

What's New?
2024.9.8 うちの小犬は「早寝遅起き」!

2024.8.30 祝! 神奈川県庁合格!
2024.8.19 ビール男とパンケーキ?(Blog)
2024.8.10 横浜よりジャカルタの方が涼しい!?
2024.8.4 高校生からインタビューを受けました
2024.7.30 ルークが10歳になりました!
2024.7.23 「人もいろいろ、犬もいろいろ」(Blog)
2024.7.19 日本経済新聞から取材を受けました
2024.7.8 「お腹を見るのが幸せ!?」(Blog)
2024.6.25 学会シンポジウムが終わった~!
2024.6.13 研究室OBが世界的なテックイベントでピッチを行いました!
2024.6.9 拙著が大学入学共通テストの問題集に使われました

Fixed Note
2024.2.23 金芝河(キム・ジハ)の詩「めしは天なり」

What's New?

  • 24.9.8 うちの小犬は「早寝遅起き」! これもまた個人差ならぬ個”犬”差なのでしょうけれど、ルークがわたしより早く起きることはほぼありません。一方、寝るときはその逆で、11時半くらいになると、わたしの目の前に陣取り、「もう時間だぞ! 寝るぞ! 早く、支度しろ!」とプレッシャーをかけてきます(写真)。で、わたしがそのプレッシャーに負けて・・・・続きはこちら
  • 24.8.30 祝! 神奈川県庁合格! 本日の朝10時に今年の神奈川県庁職員採用試験の合格発表があり、当研究室のメンバーが見事、合格しました。素晴らしい! チュッカムニダ、テタナダ(おめでとう、すごいぞ)! また、偶然ですが、10月から当研究室の新たなメンバーになる3年生3名もほぼ同時に決定。それから、先月の話になるけれど、近藤さんも1年間のスイス留学から元気に戻ってきたので、当研究室は、秋から、益々、賑わいを見せそうです(何の賑わいだろう・・・・?)。
  • 24.8.19 「ビール男とパンケーキ?」(Blog 助成金の申請書書きと研究会の報告準備、そしてこの暑さでおかしくなりそうなので閑話休題。そういえば、『海外よもやま話』のようなブログが開店休業状態であったことを思い出しました。さて、次のどちらがアメリカで本当にある名字でしょうか? ビール男? それともパンケーキ? 答えは・・・・続きはこちら
  • 24.8.10 横浜よりジャカルタの方が涼しい!? わたしは大学生のころ、1年間、ジャカルタに留学していました。インドネシアは、赤道直下の、いわゆる”熱帯”地域です。なので、毎日、とても暑くて、こんな暑い場所には、人生で二度と暮らすことはないだろうと思っていたのですが、最近の日本の夏の暑さがあまりにも酷すぎて、まさかそんなことはないだろうと思いながら、軽い気持ちで調べてみたところ・・・・。えっ? 気温が逆転してるじゃないですか! ”熱帯”より暑い、この国って何なんだ!?     

  • 24.8.4 高校生からインタビューを受けました 先日は4大新聞社でしたが、先週は、都内の高校に通うK君からインタビューを受けました。ウェブ上に載っていた、わたしの論文を読んで興味を持ち、連絡したとのこと。素晴らしいですね! 高校3年生の夏といったら、わたしの頭の中は、当時つき合っていた年下の彼女のことで一杯でした。東京の大学に行ったら別れると言われて、毎日、そのことで悩んでいたのです(で、志望大学を北大へ変更!)。それに比べて、K君はなんて高尚なんだろう。久々にちょっとだけ未来が明るく感じました。K君、ありがとう!

  • 24.7.30 ルークが10歳になりました! 早いもので、うちの小犬も今日で10歳になりました。性格も動きもとても子供っぽいので、しばしば「1歳半くらい?」などと言われます。それはさておき、ルーク、誕生日おめでとう! 誕生日プレゼントとして、大好きな「サランラップの芯」を贈呈したいところですが、最近はストックがありません。ゼミ生の皆さん、気がついたら、提供をお願いします。成績評価が良くなるかもよ!? 写真は、好物のゴムの玉子を捕まえてご満悦な様子のルークです。
  • 24.7.23 「人もいろいろ、犬もいろいろ」(Blog 暑いですね。こうも暑いと、昼間に30度を下回ったら、「ちょっと涼しい!」と感じるかもしれません(インドネシアに留学していた頃は、そんな感じでした。)。さて、写真は、我が家の温室計の表示。夏場は大体、これくらいになるように神経をとがらせています。犬は一般的に、暑いのが苦手といわれるけれど・・・・続きはこちら
  • 24.7.19 日本経済新聞から取材を受けました 日経新聞のA記者が当研究室に来られて、取材を受けました。テーマは、生物多様性に関する政策の過去・現在・未来といったもの。「生物多様性の損失を止めて、反転させる」という、いわゆるネイチャーポジティブ(右がイメージ図)が日本の国家目標になったことは、このウェブサイトでも書いたとおりですが、やはり、”大きな流れ”というか”転換点”のようなものが来ているように思われてなりません。

  • 24.7.8 「お腹を見るのが幸せ!?」(Blog お腹フェチ? いや、そういうわけではないのだけれど、実際そうなのです。この写真は、知らない方が見れば、一体何なのかと思うでしょうが、ルークがわたしの横でひっくり返って寝ている写真です。黒い物体の右上が頭、左上が前足、そして・・・・続きはこちら
  • 24.7.1 泣く子も黙る寺尾ケン!? いや、どんだけ凄いヤンキーなのよ・・・「寺尾ケン」って奴は? と思ったら、そうではなく、寺尾”研”でした。『寺尾忠能先生(アジア経済研究所)がリーダーとなり、同研究所内で組織された、資源・環境政策論をテーマとする研究会』の通称が寺尾研です。わたしも外部委員として、かれこれ10年以上お世話になってきたのですが、今日、超久々(4年ぶり)にフルメンバーで集まることができました。”泣く子も黙る”と書きましたが、寺尾研では10年間で6冊もの単行本を公刊(写真)! これは本当にスゴイこと。こういう場に居続けられたことに心から感謝!
  • 24.6.25 環境法政策学会シンポジウム(6/22@信州大学)が終わった~! 基調講演(『ネイチャーポジティブのための法と戦略』)とパネルディスカッション(PD)を何とかサバイブできて、ホッとしています。PDでは、フロアから質問状を募るのですが、「来るなよ~!」と念を込めていたものの甲斐なし。しかも、日本の環境法の泰斗である、O塚先生、K村先生、O久保先生からの質問状。「え? この3人? 大三元(*麻雀の用語です)かよ?」と思ってしまいました。何とか答えられたように思いますが、どうだったんだろう・・・・。多分、わからないままにしておくのが精神健康上は良さそうです。写真は、JR松本駅での一枚。
  • 24.6.13 研究室OBがパリで開催された、世界的なテックイベントでピッチを行いました! 5月22日〜5月25日にフランス・パリで世界最大級のテックイベント、「VIVA TECHNOLOGY 2024」が開催されました。仏大統領が例年登壇するなど、仏政府の強いバックアップの下、GoogleやLVMHグループなど仏国内外のオープンイノベーションを推進する大企業、各国の有力スタートアップ、イノベーションに関するキーパーソンが集まる世界トップクラスのテックイベントです。このイベントに、今、国内外で注目されているスタートアップ企業である(株)シンク・ネイチャー社長の舛田陽介さん(当研究室OB)が登場! 世界を股にかけて・・・・とはこのことですね。テタナダ~(すごいな~)!
  • 24.6.9 拙著が大学入学共通テストの問題集に使われました! 拙著『人新世のエコロジー』(日本評論社、2023年)の一部が、『大学入学共通テスト演習 現代文 四訂版』と『大学入学共通テスト演習 国語 四訂版』(いいずな書店、2024年)で使われることになり、先月に公刊。数日までに、わたしの手元に現物が届きました(写真)。自分の書いたものが、こうした形で受験生たちの目にふれることになるとは・・・・。何だか感慨深いものがあります。それはさておき、まだチラッと見てみただけですが、わたしがこの問題を解いてみて、正解できなかったらどうしよう!?
  • 24.6.2 「クローゼットの中にも3時間!?」(Blog 春が過ぎ去って、雷が時々、鳴るようになってきました。ルークが大嫌いなのが、この雷。雷が鳴ると、昼夜お構いなく、抱きついてきて、「何とかしてくれよ!」と目で訴えながら、腕の中でで暴れまくります。就寝中にこうなるともう大変。寝室のクローゼットに小さな踏み台を持ち込み、ルークを抱っこして、その中に入り、雷が止むのをただひたすら待ちます(写真)。今までの最長記録が午前3時から同6時過ぎまでの3時間ちょっと。石の上にも・・・・。続きはこちら
  • 24.2.23 詩『めしは天なり』 とても心地よい詩を見つけたので紹介します。韓国の金芝河(キム・ジハ)という作家の作品。

     めしが天なり
     天をひとりで支えられぬように
     めしは分かちあい食らうもの
     めしは天なり
     天の星をともに見るように
     めしは みんなが
     分かちあい食らうもの
     めしは天なり
     めし 口中に入りて
     天 わが身に入りたまえり
     めしは天なり
     ああ めしは
     みんなが分かちあい食らうもの

    四方田犬彦『われらが<他者>なる韓国』という本の70頁に載っていました(この本も名著!)。写真は、2023年10月、ソウルにて、親友のヒョンギュンとそのゼミ生たちと「みんな」で「めし」を「分かちあい食らう」ているところです。
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実際のスライダーの動きは、プレビュー/公開ページでご確認ください

「何が問題か」が問題だ

環境政策論における研究テーマとは何か? 答えは、何でも! ”環境”という言葉の先に広がる景観は、そう言っても良いほどに広い。だから、この研究室では、政策に関するものなら「何でも研究できる」としておこう。ただし、テーマは、既存の考え方やものの見方に挑むものであること。キレイな結果を出すことだけが研究の目的ではない(し、そんなことが目的だったら痛すぎる)。不格好でも、鋭い問題意識に基づいた、何やら迫力のある研究。この研究室ではそんな研究を手掛けてほしい。

及川 敬貴

(おいかわ ひろき)
横浜国立大学都市科学部教授(環境リスク共生学科)および大学院環境情報研究院教授(自然環境専攻)。横浜国立大学評議員 兼 都市科学部副学部長。環境法政策学会理事。環境法・行政法が専門。2023年2月25日に『人新世のエコロジー』(日本評論社)を公刊。同年1月27日には、日本経済新聞の『経済教室』へ「「自然の恵み」は計算できる」を寄稿。その他の業績や経歴・学歴などについてはこちら

研究室のメンバー+1匹

大事にしていること

「メリハリをつける」。ゼミは週に1日だけ。ならば気合を入れて臨もう。自分が報告担当であろうと / なかろうとしっかりと文献を読み込み、“考えた”上でゼミに臨む。オンとオフの切り替えが大事。
「ちょっとだけ新しい・ちょっとだけ面白い」を持ち寄る。ゼミの前後で自分が“変異”する。それを感じ・認め・驚けるように。

ゼミのこと

ゼミ(seminar)>> 週1回(月曜午後)、2~3時間程度。次の2つがメイン。

 文献批評 >> 課題文献について、担当者がレジュメを用意し、それを基に皆で検討を進めていきます。レジュメには、対象となった論文の主張や批評担当者の解釈・見解、それに関連文献情報などが書き込まれます。これまでの課題文献(の一部)については こちら

 研究報告 >> 文字通り、自分が手掛けている研究内容の報告です。なお、研究室メンバーの研究テーマはこのサイトのもう少し先で紹介されています。

ゼミを通じてできること
 成功すること。それは約束できません。しかし成長することはできます。そのための"場"がゼミです。具体的には、上の「文献批評」や「研究発表」を通じて、<批判的に考える力>をつけていきます。いわゆる Critical Thinking です。この力を身につけられれば、どのような時代・社会状況でもサバイブしていけるはず。

就職先や進学先のこと

4年生の進路は「一般就職」と「大学院進学」が半々くらい。研究室のOB&OGには公務員が多いです(法や政策の勉強は公務員試験に通じるところがあるからなのかも)。大学教授も2名。民間企業については、いわゆる大手企業が多いですね。ただ、研究室OB・OGの中には、現在、ベンチャー企業の社長をしている人もいます。最近の主な就職先は次のとおり。
 
<公官庁>
 環境省、東京23区、神奈川県、横浜市(3名)、茅ケ崎市(神奈川県)、高崎市(群馬県)、別府市(大分県) など
 
<民間企業>
 ENEOS(2名)、東京ガス、出光昭和シェル、IBM、日立製作所、日立社会情報サービス、NTTデータ通信、伊藤忠テクノソリューションズ、読売広告社、NEXCO東日本、楽天(2名)、ニチレイ、三菱UFJリサーチ&コンサルティング、PwC(PricewaterhouseCoopers は外資のコンサルティング会社。世界三大監査法人の一つ)、三井住友カード など

<環境系のベンチャー企業>
 シンク・ネイチャー(生物多様性関連)、ゴーレム(気候変動関連)

<教員>
 高校教員(神奈川県)
 
<大学>
 福岡女子大学(教授)、静岡文化芸術大学(准教授)

及川の業績(の一部)。2022-2024

著名な環境法の教授や弁護士とともに研究会を組織(5名しかいないので、サボったり、発言をしないなんてことは無理。)。半年に一度、裁判所ウェブサイトや主な判例集(判例タイムズなど)に掲載された判例・裁判例の中から、環境関連のものをすべてピックアップして整理。研究会での分析を加えた上で、公刊しています。なかなか大変ですが、こうした地味な作業がとても有益だったりします。(『民事判例(日本評論社)』27号40-51頁)
自然が絶滅しかかっている? いや、むしろ"妙に元気”になって、人間に挑みかかってくるケースも多いのではないか。だとしたら、わたしたちは、自然を守るだけではいけない。必要なのは、機に応じた「手入れ」だろう。本書では、そのために必要な考え方としての「生態系サービス」を、そして、参照軸となる世界各地での手入れの事例を紹介していく。(日本評論社、¥2620)
稀少な動植物を守ろうという条例(=その地域で作られる法律のようなルール)を制定する自治体が増えてきた。しかし、いくつかの自治体ではそのようなルールを作るつもりはないという。なぜなのか? 問題がないということなのだろうか? 本論文ではその謎を探った。(『応用生態工学』25巻2号97-102頁)
どう見てもベターな政策提案。しかし、それが採用されないことは多い。なぜか。積み重なった"しがらみ”が、古い政策たちの防波堤となるからである。そうした"しがらみ”(=経路依存(性))が”断ち切られる”ことはないのか? ある。稀にだがある。そんなケースが、1970年におけるアメリカ環境保護庁(EPA)の創設であった。経路依存性が原因でずっとできなかった(環境をめぐるさまざまな)権限の統合。それを成すカギとなったのは?(『行政法理論の基層と先端』所収、信山社)
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EAEH2023(2023年度アジア環境史学会)にて、及川と Lee Jongmin 教授(韓国科学技術大学)が共同で企画・立案し、二人で座長も務めるパネルセッション。日韓の若手研究者5名が登壇予定。6/28~7/2に大田(韓国)で開催。

ある採石事業(法的な認可取得済み)によって地下水脈が傷つく可能性があるが、確たる証拠は示せない。そのようなケースで、地下水脈由来の生態系サービス(生活用水など)を守るために、当該事業を禁ずるような条例は制定できるのか。最高裁の判断(最三判令和4年1月25日)はいかに?(『民事判例(日本評論社)』25号118-121頁)

アメリカ環境法学の定番テキストの邦訳。及川は第11章「エネルギー」(第1節 今日におけるエネルギー事情と課題、第2節 省エネルギー、第3節 再生エネルギー、第4節 新規発電施設と送電線の立地、第5節 環境問題)を担当。(尚学社 ¥5555)
日本の行政法学の定番テキスト。最新の第4版がついに公刊。及川は、第6講「行政組織と公務員」、第29講『地方自治の仕組み(1) ―地方公共団体の組織と活動―』、第30講『地方自治の仕組み(2) ―行政主体間の法関係―』を担当。(三省堂 ¥3740)
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わたしたちの問題意識

里山NPOが「閉塞感」に覆われているというのは本当なのか?(中村愛・R5大学院修士論文)
行政とNPOが「協働」して社会事業を運営していく。日本でもそんな光景が普通に見られるようになった。御上と下々という関係性からの脱却。素晴らしいことではないか! そのように評してみたいところだけれども、自然を相手にするNPOの間では、どういうわけか「閉塞感」が広がっているという。

本当にそうなの? だとしたらなぜ? 

本研究では、人々がNPOの活動へ参加する駆動力となっている「楽しみ」に着目し、これらの問いへ答えることを試みた。なぜなら、「楽しみ」の減退が「閉塞感」が蔓延する一因といわれているからである。

実際、「楽しみ」は減っていたのか、増えていたのか、それとも? ある里山NPOへの調査を行う中で見えてきたこととは?
文化的サービスもナッジといえるのではないか?(近藤聖夏・ベルン大学(スイス)留学中)
これまで、観光地において景観の美化が観光客を環境に配慮した行動意思へ導くとする研究は国外で多く行われてきた。その一方で、地域住民の環境に配慮した行動意思には文化的サービスの享受レベルが関係するという研究も存在する。

本研究では、これらの先行研究に加え、ポイ捨て行動の抑制要因に関する研究から明らかになった、観光客のポイ捨て行動の抑制フロー(景観の美化→情緒的ブレーキ→ポイ捨てをしない)を用いる。

この既存のフローに文化的サービスの享受レベルを取り入れ、アンケート調査を通して定量的に分析することで「景観の美化→情緒的ブレーキ」の間のロジックを強化し、先行研究のフォローアップをしたいと考える。

加えて、文化的サービスが観光客の行動を望ましい方向(ポイ捨てをしないという環境に配慮した行動)に変更させる選択アーキテクチャー、つまり「ナッジ」であるという可能性を模索することで景観美化政策へ新たな美化基準を提案したい。

コウノトリやトキのような生き物(=象徴種)でなければ、地域での環境保全活動を促進できないのか?(関根佐和子・R6大学院修士論文)

地域の生物を環境保全活動のシンボルとして利用することで、生物多様性保全とその利用に対する人々の関心や理解を高めることができるという。

これまで、そのような形で利用されてきたのは、コウノトリやトキなどのような、社会的関心の高い種(=象徴種)であった。では、○○県の花や○○市の鳥など、地方自治体のシンボルとして指定される生物(=シンボル種)ではどうだろう。シンボル種は、象徴種のように、地域の生態系保全とその活動への人々の関心や参加を集めることができないのだろうか? いや、できるのでは?

本研究では首都圏の地方自治体を調査対象に、シンボル種の中でも「鳥」のカテゴリーに注目して、その選定状況や選定の経緯、活用状況を調べた。自治体の中でシンボル種はどのような存在として認識され、どのように利用されているのだろう。果たして、地域の生物多様性保全に貢献できるような機能を持っているといえるのか?

レッドデータブックは単なる生き物リスト。しかし、それは時として規制の道具にもなる?(伊藤航輝・R5大学院修士論文)

レッドデータブック(RDB)は絶滅のおそれのある生き物たちのリストである。

単なるリストなので、それには開発事業を規制するような力は伴わない。というのが教科書的な説明であった。

しかし、全国の都道府県を対象にしたアンケートおよびヒアリング調査を行ってみたところ、RDBは開発事業を抑制するための“指導”にも用いられている実態が浮かび上がってきた。

RDBは単なるリストというわけではなく、事実上の規制ツールでもあるのだろうか? 似たような“事実上の規制ツール”は他にもいろいろありそうである。

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水族館がこれからも存続するにはどうすればよいか?(岡田優里・R6卒業論文)

水族館。もしかすると、「必要ない」と考える人もいるのではないだろうか。実際、水族館は経営にかかる費用が巨大であり、皆が必要ないと判断すれば、その存続は危うい。そういった状況で水族館がこれからも存続するにはどうしたらよいか?

その答えはきっと「社会に貢献する存在であることをアピールすること」に違いない。では、その「貢献」とは何だろう。地域社会教育機能を発揮することだ、とも言われてきたが、それだけだと今一つよく分からない。そこで、本研究では、新江ノ島水族館(神奈川県藤沢市)が行っている、社会「貢献」的な取組みが、地域社会によって、どのように受け止められているのかを調査した。

その結果、そうした取組が地域社会に認識されていることはもちろん、地域社会がポジティブな応答をしていることが窺われた。

なお、こうした「貢献」は、生態系サービスという考え方を援用するとより分かりやすくなりそうである。すなわち、水族館は海と地域社会の間に立ち、海の恵みを地域社会へ文化的サービスとして届け続けている。そのように解してみてはどうだろう? 

子どものころの自然体験だけが環境保護意識を高めるのか?(加藤大智・R6卒業論文)
環境保護意識(=環境を守ろうというわたしたちの思い)の形成を促すの何なのでしょう? 先行研究では、子どもの頃の自然体験の重要性が指摘されています。なぜなら、アンケートで回答されている子どもの頃の自然体験と環境保護意識に相関があるからです。

アンケートで子どもの頃の自然体験を計測できるという仮定は、私たちの記憶が出来事を正確に記憶している、つまり、”現在の私”によって歪められたものではないという認識のもと成り立っているといえるでしょう。

しかし、心理学における“自伝的記憶”という考え方によれば、記憶は”現在の私”から影響を受けて想起されるそうです(!)。であるならば、アンケートで得られた子どもの頃の自然体験のデータは、あくまでも”現在の私”の環境保護意識が投影されたものに過ぎないのではないでしょうか? そうすると、常に”現在の私”が重要なので、大人への自然体験の提供によっても環境保護意識は育まれ得る、ということになりそうです。

このような問題意識の上に、今回の卒論では、アンケート調査を行い、その結果を基に、自然体験と環境保護意識の認識をモデル化してみました。今後は、これを実証することを目指します。

企業だけでなく、普通の市民が主体となる排出量取引制度とはどのようなものか?(横田悠貴・R6卒業論文)

カーボンニュートラルの実現に向けて、排出量取引という手法の制度化が進んでいる。この制度については、企業を、温室効果ガスの削減及び取引主体と位置づけるものが多い。しかし、近年、日本の一部の自治体において、一般市民を温室効果ガス削減の主体とするような制度が現れ始めた。

こうした制度はなぜ構築されたのだろう? どのような仕組みを擁するものなのか? そして、現状どのような運用がなされているのか? 管見の限り、こうした問いに正面から答えているような先行研究は見当たらない。

そこで、本研究では、広島市と京都市で導入された「市民参加型の排出量取引」制度をとり上げ、その構造と実態に関する分析を行ったものである。

その結果、この新たな制度の全国的な普及を妨げる要因がいくつも浮かび上がってきた。

関係人口はどうやったら作り出せる? ふるさと納税はどうだろう?(安東日向子・R6卒業論文)

関係人口とは、観光でもなく、移住でもない、「地域と多様に関わる人々」のことをいう。なぜ今、これが注目されているのか? それは、日本全体で人口が減り続けているからである。そうした状況では、定住や観光によって地方創生を図ることは難しいだろう。そこで、関係人口という、”もう一つの人口”に注目が集まるようになった。

では、関係人口をどうやって創出するか? その手立ての一つが、ふるさと納税であり、その中でも、納税してもらったお礼として、田舎暮らしや農作業などを無料で体験してもらうなどの、いわゆる「体験型返礼品」にそうした関係人口創出機能があるのではないかと言われてきた。しかし、先行研究で論じられているのはそこまでであり、具体的にどのようなタイプの体験型返礼品の創出機能が高いのかはよく分かっていない。

そこで今回は、ふるさと納税サイトである『さとふる』に掲載されている約3万件の体験型返礼品を内容ごとに分類し、今後の類型化に向けた指標づくりを試みた。その結果、横軸を『地元民との交流の有無』、縦軸を『地域性の高さ低さ』として分類すると、象限ごとにある程度の特徴がみられ、返礼品の関係人口創出可能性を検討する際の手掛かりになりそうだということが分かってきた。

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